何度も翻訳原稿をチェックしましたが、納品にはまだミスがあって、「あ~、惜しい!」、「あ~、しまった!」という気持ちがあったことありますか。翻訳のミスは多種多様です。本記事は様々なベトナム語翻訳文書を考察した上で、ベトナム語翻訳のタイプのミスを大きく3つのタイプのミスに分類し、具体例と共に丁寧に解説していきます。ぜひこの記事を参考に翻訳の精度を高めましょう。

翻訳とは
翻訳とはある言語で表された文章を他の言語に置き換えて表すプロセスです。ただし、翻訳は、ただある言語から別の言語に訳することではなく、元原稿の意味、ニュアンス等が伝わるように、翻訳者は語学力の他に、専門知識、思考力、双方の言語と文化の理解が必要です。
ベトナムにおける日本語翻訳の歴史
1973年9月21日、日本とベトナムは外交関係を樹立しました。しかし、ベトナムと日本との間には8世紀から長い歴史的な繋がりがあったと言われています。特に、17世紀ごろ、朱印船貿易の時代において、日本の船はベトナムに来て、日本の銀や銅、硫黄、刀剣などを搬入し、ベトナムから生糸や絹織物、砂糖などを搬出しました。交流の初期、おそらく中国語といった媒介言語でコミュニケーションを取ったでしょう。ベトナムの翻訳分野の歴史からみると、昔から外国の文学作品をはじめ、多くの経済・社会・政治の文書は中国語、フランス語、ロシア語、英語からベトナム語に翻訳されました。しかし、日本語の文学作品は直接翻訳がほとんどなく、中国語訳、フランス語訳、ロシア語訳、英語訳から間接的に重訳されました。ベトナムで最初に訳された日本文学は『佳人之奇遇』(東海散際月士著)であり、1913年頃 Phan Chu Trinhによって、中国語訳から翻訳されたものです。また、Nguyen(2013)は1945年~2001年までにベトナム語に訳された日本文学は79作品であり、その中で直接翻訳はわずか6作品であり、73作品が重訳だったと示しています。2000年以降、日越交流関係が深まっていくと共に、日本語翻訳はベトナムで非常に発展しています。2002年から2023年にかけて、146作品が出版されました。そのうち、約70%(102作品)は日本語からベトナム語に直接に訳されたものということです。そのうえ、現在までに、数多くの日本語の法律、経済、社会という様々な分野の文書は日本語からベトナム語に直接翻訳されました。
ベトナム語翻訳におけるよくある3つのタイプのミス
物理的なミス
翻訳のとき、タイピングミスや読み間違いのような物理的なミスが避けられないものです。
例えば、ベトナム語は声調記号が6つある言語です。ベトナム語翻訳の時、小さな声調記号のタイピングが間違ったら、変な意味になる場合があります。次の例を見てみましょう。
日本語 | ベトナム語翻訳の例 |
酒類提供罪:2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 | Tội cung cấp thức uống có cồn: Phạt tù đến 2 năm và phát tiền đến 300,000 yen (???)酒類提供罪:2年以下の懲役又は30万円以下の支給 |
誤:phát tiền 支給 正:phạt tiền 罰金 |
また、読み間違いは誤訳の原因の一つになります。「ピザ」と「ビザ」、「提供」と「提案」のような言葉を読み間違ったら、思い込んで文章の解釈を間違ったケースもよくありますので、お気を付けてください。

文法的なミス
翻訳する際、多くの文法の認定ミスの中で、主語と修飾節の認定、二重否定文という2点を取り上げます。
日本語は主語を省略する傾向がある言語です。しかも、複数の修飾節があって、主語が非明示の文章が少なくないです。そういう時、翻訳者は文の構成を分析する必要があります。次の例を見て、主語や修飾節という文の構成を分析してみると、「記念式典には、いくつのパフォーマンスが行われたか」と答えられたら、正確に翻訳できるでしょう。
29日に開催された記念式典では、日本三大盆祭りのひとつであり、昨年ユネスコ無形文化遺産に登録された「郡上踊り」を皮切りに、岐阜市出身でグラミー賞2度受賞したトランペット「大野俊三」さんの演奏や美濃市出身の講談師「神田京子」さん、羽島市出身のピアノ演者「後藤雄也」さん、垂井町出身の琴演者「鹿野竜星」さんの三人の協演を行い、岐阜から世界に飛び出した先人たちを講談風に紹介され、岐阜県の「魅力」と「誇り」が多く盛り込まれた式典となりました。
(国際交流・多文化共生情報誌 世界はひとつ 155号 p.1)
また、日本語は二重否定文がよく使用されています。「~ないわけではない」、「~ないこともない」、「せざるを得ない」などです。否定の言葉を二度重ねて用いることで、肯定の度合いを強めたり、婉曲に肯定したりするとしています。しかし、二重否定文はベトナム語翻訳者・通訳者にとっては「言葉の罠」のようで、翻訳が間違いやすいところです。例えば、ある経営統合協議では次の発言があります。
「率直に申し上げれば、成就しない可能性もゼロではありません」
主語も述語も否定が入っています。さらに、述語の否定は「ゼロ」の否定です。ベトナム語に翻訳するとき、文字通りに翻訳すれば、わかりにくくなりますので、単に「Thành thật mà nói, có khả năng không đạt được mục tiêu(率直に申し上げれば、成就しない可能性もあります」と翻訳すれば良いかもしれません。
語彙的なミス
ベトナム語の中に、中国語を由来する語彙という漢越語が数多く残っています。ベトナム人日本語学習者にとっては、漢字を見て、意味が推測できるし、相当する漢越語をすぐ思いつくというメリットがあります。しかし、なんでもかんでも相当する漢越語に翻訳すれば、不自然なベトナム語になります。典型的なミスは日本語の「対応する」という言葉をベトナム語に翻訳するケースです。日本語の「対応」はベトナム語では「đối(対)ứng(応)」(漢越語)と言います。しかし、ベトナム語に訳するとき、すべての場面には「đối ứng」になるわけではなく、下記の例文のように場面によって言葉の選びが異なっています。
日本語 | ベトナム語翻訳(案) |
クレーム対応の手順 | Các bước xử lý tình huống khách hàng phàn nàn (処理) |
【病院のお知らせ】24時間365日対応します(かかりつけ患者様に限ります) | Hỗ trợ 24 giờ trong ngày 365 ngày trong năm (サポート) |
災害対応 | Ứng phó khi có thiên tai- thảm họa (適応する/対応する) |
英語対応OK | Có thể sử dụng tiếng Anh (英語使用可) |
また、日本語からベトナム語に翻訳するとき、実際にベトナムにはない物や概念は、どのように翻訳すれば良いか重要な課題です。例えば、「わび」、「さび」という日本の独自世界観、和室の床の間などです。翻訳の際の文化適応が大事ですが、場合によって、ベトナム化することは日本的な意味や価値が損なわれます。
さらに、意味やニュアンスがたくさん重なっている言葉や表現を翻訳するのも難しいです。特に、法律文書翻訳です。例えば、「酒類提出罪(Tội cung cấp thức uống có cồn)」という簡単そうな言葉ですが、法律専門用語の翻訳なので、表現や語彙の選びはきちんとしないといけません。翻訳者は下記の3点を考える必要があります。
- ベトナムの法律上には、酒類を提供することは犯罪行為にならないこと
- 「酒類提出罪」は酒類を提供する行為だけではなく、酒類をすすめる行為も含めていること
- 酒類にはビールやお酒だけではなく、アルコールが入っている飲み物ですから、道路交通法の文章には「thức uống có cồn(アルコール入り)」に訳したほうが正確です。
そのため、「酒類提出罪」の場合は、翻訳原稿のレイアウト、構成、文脈によって、翻訳者は下記の翻訳案2か翻訳案3にするか、或いは翻訳案1にして酒類提出罪についての説明を注釈の形で追加する必要があるかもしれません。場合によって、翻訳の依頼者に相談しなければなりません。
日本語 | ベトナム語翻訳(案) |
酒類提出罪 | (案1)Tội cung cấp thức uống có cồn アルコール飲料を提供する罪 |
(案2)Tội cung cấp thức uống có cồn hay mời thức uống có cồn アルコール飲料を勧めるか、あるいは提供する罪 | |
(案3)Tội cung cấp thức uống có cồn hay mời thức uống có cồn cho người điều khiển phương tiện giao thông 車両等を運転した者にアルコール飲料を勧めるか、あるいは提供する罪 |
▼法律関係文書のベトナム語翻訳について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください
また、ベトナム語翻訳では、記号の意味もよく間違います。例えば、経済レポートや決算書などでよく出てくる記号の一つは▲です。ベトナム語の文書には▲の記号をあまり使われていません。エレベーターにある▲記号は「上に行く」を意味するので、「上がる」ではないかと推測できるでしょう。しかし、実際は▲記号は日本語ではマイナス/赤字です。日本語からベトナム語に翻訳するとき、間違えないように気を付けましょう。
まとめ
翻訳のミスのタイプは数えられないほど多種多様です。本記事では、実際の例文を紹介しながらベトナム語翻訳のミスを主な3つのタイプに分類しました。翻訳する際、ミスや誤訳等を避けるために、丁寧に翻訳するほか、ダブルチェック/校正を行う必要があります。
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